外は静寂に包まれていた。

渚の屋敷のある場所は事件が起こってはいない。

僕が借りていたアパートの部屋は返した。

あそこにいるのは危険と踏んだからだ。

そして、今もニュースで報道されている。

多くの人間が王によって、石にされ殺害されたも同然だったからだ。

石の兵隊達は王が死ぬや、崩れ砂になり散っていった。

今は、僕の身を守る者は何もなくなってしまった。

僕は空を見上げる。

渚はすでに星に帰ったのだろう。

渚に対して、僕が出来る事は何もない。

出来ない事を出来ると思い込む事こそが時間の無駄だ。

「忘れちゃいけない」

僕の奥底に浮かぶ一つの感情を。

それこそが僕にとっての全てだ。

歩き続け、駅前にたどり着く。

僕の家はここから二つ向こうの街にある。

改札口で切符を通そうとしたところで、反対側から春服の桜子が出てくる。

髪を切ったらしく、ショートカットになっていた。

僕の姿を見ると、足を止めた。

「耕一」

桜子が僕の名を呼ぶ。

僕は、何も答えない。

「まだ、姉さんの影を追っているの?」

「お前には」

「関係のない事、だよね」

「ああ」

物悲しさが伺えたが、どうでもいい事だった。