僕は、古びた屋敷の渚の部屋で一人佇む。

ずっと傍にいた母親と父親であった男の写真立てに入った写真を手に持ち見ながら。

この屋敷の主はこの星にはいない。

僕が求める者が、本当に何なのか。

復讐である事は違いないはずだ。

そのはずなのにも、関わらず僕は渚の屋敷にいる。

行動に無駄が生まれている。

ここにいても意味などないのだ。

「ここに、何の用だ?」

後から部屋に入ってきたのは、今は家の管理人である相場だった。

服装や髪色、髪型はいつもと代わりはない。

「お前には、関係のない事だ」

写真立てを元の場所に戻し、僕は立ち去ろうとする。

「お前が、お前が全てを壊した」

僕が横を通った時、僕を恨む声が耳に届く。

足を止めるが振り返らない。

「僕を殺すか?」

「私はお前のような理性のない猛獣とは違う。私は、私自身の役目を理解している」

僕は足を進める。

「もう、この屋敷には来るな。ここはお前の来ていい世界ではない」

その言葉に対して返答せずに、部屋から出る。

廊下では旅行用のケースを持った、アキラがいた。

「耕一じゃない。相変わらず、暗い顔してるわねー」

「その荷物は何だ?」

「これ?そろそろお金も溜まったし、いつまでも人様の家で居候ってわけにも行かないしね」

新しい家でも見つけたのだろう。