渚は口元に手を当てて、考える。

「少し調べたのですが、彼の目的のためにあなたが動いているというのであれば、あなたがどうすべきかは分かりますね?」

追い討ちとばかりにデザイアは畳み掛ける。

「分かりました」

渚は静かに僕を地面へと降ろし、頭を下げる。

「一つだけ聞かせていただいてよろしいでしょうか?」

「何ですか?」

「星を見つけたという報告をするのであれば、自分で報告したほうがいいのではないのですか?」

「それはあなたに譲りますよ。あなたを本国へ送り返すと、喜ぶお方もいますからね」

口元を吊り上げた笑いにこめられた物は良い意味ではない。

僕は、止めろと言いたかった。

だが、何もいえない。

「東のほうに、宇宙船を止めています。起動は私にしか出来ませんので、先に行ってて下さい」

最後と言わんばかりに渚は僕と相場を見る。

「渚、本当に行ってしまうのか?」

「相場さんには私のわがままに付き合わせてばかりで、ごめんなさい」

相場に頭を下げる。

「私は渚に育てられた恩がある。その恩はまだ返せてないんだ。だから、渚が謝る事じゃない」

「ありがとうございます」

そして、僕の前へ再び座る。

「耕一さん、あなたには本当に感謝してます」

僕の固まった手に優しく手を添えた。

「あなたを求めるあまり、自分を偽った私に対しても優しくしてくれました」

僕は、渚を利用していたに過ぎない。

僕には、優しいなどという言葉が似合わないし、本当は恨まれるのが正しいはずだ。

「あなたには、あなたのやるべき事がある。それを、忘れないで下さい」

笑みを浮かべた渚は立ち上がり背を向けて歩き出した。