頭は後方へと吹っ飛ばされ、頭から血が流れる。

石化は口元まで進んでおり、首すら動かせなくなる。

僕は視線だけを王へと戻す。

剣の矢は王の頭を打ち抜いていた。

脳を失った王は浮遊能力が消失し、地面へと落ちる。

石は硬かったらしく、地面に落ちてもかけることはなかった。

僕は同じ姿勢のままで、転がる。

王が動く気配はない。

しばらくすると、渚が近づいてきた。

「耕一さん!」

僕の体を抱きしめる。

僕は言葉を話す事は出来ず、目だけを渚へと動かした。

「相場さん、お願いします。耕一さんを、元に戻してください!」

「渚、今のままでは、私には出来ない」

相場は首を振る。

王の力は強大という事になのだろう。

「そんな、じゃあ、耕一さんは、このままなんですか?」

渚の瞳から涙が流れる。

その雫が頬へと落ちるが、石化した部分で感覚がない。

「私が、あなたを守らなくては、ならないのに、ごめんなさい、ごめんな、さい」

渚は謝り続けるが、僕から返答する事は出来ない。

「ラヴィヌスの涙は本当の物なのかしら?」

背後に立っているのは、デザイアだ。

「お前」

相場は渚を侮辱した行為に腹を立て、デザイアに近づこうとした。

しかし、渚がそれを制する。

「本当、短気な人ばかり、交渉の余地もないですね」

「交渉?」

渚は涙をぬぐいながら、デザイアを見上げる。

「ラヴィヌス、今から本国に帰りなさい」

「それは、どういう意味ですか?」

「あなたは報告の義務があります」

「デザイア、それを報告するという事は、あなたは自分のやった事を認めるという事ですか?」

「本国にとって、有益になるような事をしたまでに過ぎません」