「練習さいかーいっっ」


愛川先輩の声が聞こえた。


はーあっ、もう練習か。 もう少し、前田先輩の話しを聞きたかったな。



「まお、コップ」


グビッと残りのお茶を飲み干し、空いたコップを木下先輩に渡した。


「ほら、みんなも持っているコップをまおに渡して練習再開するぞ」


ぞろぞろ木下先輩に近づいて、コップを渡す。


「いっくん、練習頑張ってね」


「おうっ」


いいなー、前田先輩。 木下先輩に“頑張ってね”なんて言われたら、俺。 いつも以上に頑張れちまう。


両手にコップを抱えて前田先輩の近くを去ろうとする木下先輩の背中を見つめる。


「あっ、まお!」


木下先輩が振り向いた。


「タオル。 あんま日光とか当たるなよ」


自分が使っていたタオルを木下先輩に頭に掛ける前田先輩は、まさに彼女のように扱っている。


「ありがとう。

じゃあ、みんなも練習頑張ってね!
…… あたしはコップ洗って来るから」


俺ら部員に向けるその笑顔に、全員やられたのは、言うまでもない。