うそ。

そんなことって、あるんだ。



「2年前の京都ですれ違ったときのこと、覚えていますか」

驚いて返事をできない私のほうに、彼が振り返った。



私は、どう言ったらいいのかわからなくて、出た言葉は


「相変わらずさみしそうな笑顔ですね」




どう思われただろう。
でも、それが本当の感想。


「よかった、覚えていてくれたんだ」
「あなたの笑顔が、忘れられなかったの」




カバンを肩にかけ直して、その人のとなりに座る。


「名前は?」
「真梨子。滝原真梨子っていうの」
「そうなんだ、僕は石崎龍之介」