出会いは中学の修学旅行だった。

「彩子、どっち行こうとしてるの?ホテルはあっちだよ」
「あーごめん!」
「どんだけ方向音痴なの?そのうちどっちが右かわからなくなっちゃうんじゃない?」
「んなことないよぉ……」
方向音痴で甘えん坊な彩子と二人、初めて行った京都の町で道に迷った。
ったく、彩子が「鹿見たい!」なんて言うからだよ。てか鹿は奈良だし。
「ねー夕紀。やっぱり鹿は京都にいるよ!」
「そりゃいるかもしれないけど、そこら辺を歩いてるわけないじゃん」
同級生のはずなのに、いつの間にか私の妹(もしくは娘)みたいになってる彩子の右手を引いて、ホテルに向かう。人ごみの中を歩いているから周りがうるさくて、もはや彩子の声は聞こえない。
おまけに向こう側からも、修学旅行生が集団で歩いてくる。
彩子を離さないように手をぎっちり掴んで、修学旅行生たちとすれ違った。


「……?」


その瞬間、何かを感じる私。
後ろを振り返ると、一人の男の子がこっちを向いている。
―――さっきすれ違った子だ。
目が合う。どうしたらいいかわからなくなって戸惑っていたら、男の子がほんの少しだけ笑った。
すごく悲しそうで、やさしい笑顔。
彩子が私の手を引いているのがわかったけれど、そんなのどうでもよくて、小さなめまいに襲われる。
なにがおきたの?
何もわからないまま彩子の手を引いて、気づいたらホテルに戻っていた。