子供のように両手をバタバタと振る私。
それをみてさおりんが真似をし、両手をおおげさに大きく振る。
私がさおりんに向かって「ちょっと!」と言えば、さおりんは「あはははは~」と笑ってくる。
私だってさおりんが冗談でからかってることは、頭の中では理解できていた。
それでも、恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。
この矛盾は、ある感情を知ったものにしか理解できないだろう。
もちろん、その“感情”というのは‥‥。
すぐに騒ぎは収まり、さおりんと私は隣り合い黙って歩いていく。
「‥‥さおりん。」
静かになったその場の空気を壊したのは私だった。
「なあに~?」
何が聞きたいかなどわかってるくせに、さおりんはあえて訊き返す。
どうせ愉快そうな声と顔をしていて、あえて私のほうを見向きもしないのだろう。
もちろん、私も真っ直ぐ前を向いたまま、出来るだけ平静を装い、静かな声で訊く。
「東雲くん、何で休みなの?」
「‥‥実はね、その‥‥東雲くんは‥‥。」
「?」
さおりんがもったいぶっている。
何か言いづらいことでもあるのだろうかと不審に思い、さおりんの顔を見る。
するとさおりんが目を細め、わざとらしく私に目線を合わせないようにした。
そして、意を決したかのように目をぱっと大きく見開き、私の顔をじっと見つめる。
そのまま人差し指を突きたてながら、ゆっくりと喋りだす。
「‥‥彼、死んじゃったんだって。」
「うそつけ。」
馬鹿馬鹿しすぎる。
私は呆れ半分(半分は安堵だった)で鋭くツッコミを入れた。
もちろん、即答である。
それを見てさおりんはつまらなそうな顔をし、筋が全く通らない文句を言ってきた。
「さっきまであんなに動揺してたくせに~。レナったらよくわかんなーい子ですーっ。」
「‥‥で?本当の理由は?」
「えーとね、確か、ここの坂道を自転車で猛スピードで降っていって~。」
「いって?」
「車と追突したんです。」
「うそつけ」
当たり前だけど即答。


