さおりんは、小学校の頃からの親友だ。

といっても、1年生からずっと一緒だったわけではなく、彼女は3年生の頃に引っ越してきた子だ。

高い鼻、大きな黒い瞳、ぷっくりとした唇、そして肩甲骨あたりまである、漆黒の長髪。

まさしく、「大和撫子」そのもの。

小学3年生にしてはおかしくないですか?

そう、問いたくなったほどだ。

とにかく、私にとって彼女の第一印象はそれだった。

言い忘れたわけではないが、もちろん、性格だって良い。

ただ、転校したての頃は恥ずかしかったのか、塞ぎ込んでいて少し暗かった。

その後すぐに、打ち解けることは出来たのだけれど‥‥。

ついでに、小さい頃から茶道を習っていたらしく、その動きはとても優美。

それなりに大きい家に住んでいるし、頭も悪くない。

つまり、才色兼備なのだ、さおりんは。

そんなさおりんは、私にとって大切な友人。

クラスが同じということもあって、彼女とはいつも一緒に行動している。

それはそうと、さおりんの家からここまで、1キロ近くあるはずだが‥‥。

ずっと走ってきたのか?

見た目と違い、さおりんの身体能力が異様に高い件についてはこの数年で十分に身にしみてわかっているので、それについては特に触れないことにした。


「ね、ね。レナ。」

「ん、何?」


さおりんが可愛らしく首をかしげながら、私に話しかけてきた。

さおりんの方に顔を向け、にっこりと微笑みながら続きを促す。


「東雲くん、今日は休みみたいですよ。」

「えっ!?」


顔が一気に熱くなるのがわかった。

口元を右手でぱっと隠す。

私の癖だ。

誰にも知られたくないこと、恥ずかしいことをいわれたとき、何かに驚いたときなど、よくこういう反応をしてしまう。

休み、と言う単語に驚いたわけではなく、さおりんがいきなりそんなことを言ってきたこと自体に驚いたのだ。

驚いた、というか、ものすごく恥ずかしくなった、が正しい。


「べ、別に東雲なんて関係ないし!な‥‥なん、でそんな、こと」

「レナったら純情〜。かわいいですっ。」

「ど、どこが可愛いのよっ」