「あ、うん、まぁ・・・」

 と、曖昧に返事をする仙太に、空兎は頬を膨らませて、ジッと疑いの視線を向けている。
 後ろめたさのある仙太は微妙に視線を逸らして、気まずそうしていると、セレビアの救いの手を差し伸べられてきた。

「とりあえずこのまま闇雲に動いていても、しょうがないわ。降りて、少し休みながら、対策を考えましょう」

「そうですね」

 ジョーが賛同したのに、連動するかのように仙太も「あ、僕もそれがいいと思います」と早口で賛同した。

 そんな仙太に空兎が噛みついた。

「こらぁっ! なんかごまかそうとしてない?」

 今にも手をあげそうな勢いの空兎に、ジョーが「まぁまぁ」と制しながら宥める。

「まだ冒険は始まったばかりですよ。慌てず一休みしましょう」

 ジョーに言われては強く言えないのか、空兎は唇を尖らせたまま押し黙った。
 仙太は内心で安堵とする。

「それじゃ休める場所を探しましょ」

 セレビアはそう言って、絨毯の高度を下げながら、ゆっくりと飛行させ、程なくして発見した綺麗な湖のある森で、全員賛成の元、そこへ着陸した。

 陽の光に照らされて水面がキラキラしている湖の畔で、空兎は思いっきり伸びをして、それから深呼吸をした。鮮度の良い酸素が、体に満ちていく感じがして、空兎は気持ち良さそうだ。

「ん~、なんかいいね~、こういうの! ねっ、せっちん!」

 仙太にとっては都合よく、機嫌も直っているようだ。

「あぁ・・・・・・そうだね」

 仄かに吹く五月の風は少し肌寒いが、森の木々がざわめき、耳に心地よく響く。普段住んでいる場所では味わえない空気を仙太も堪能していた。

 なんとも和やかな二人の様子に、ジョーは朗らかな微笑を浮かべながら見つめている。

「まるで保護者ねぇ」

 適当な大きさの岩に腰を掛けているセレビアが、風景ではなく、空兎と仙太を眺めているジョーを見て、そう例えた。

 建前上、間違いではない。仙太の母親にはそういうことで、二人の旅行を許可されているのだから。

 だが、その辺の事情を知らないセレビアに言われて、ジョーは少し照れたように、後頭部を撫でた。