腰に届きそうな長い栗色の長い髪。くりっと大きな瞳はその少女を綺麗というより、可愛いという部類に印象づける。

　セレビア程ではないが、それでもモデル体型で、健康的な長足が魅力的なその女子は、ブレザーに紺のミニスカ。

学校指定のショルダーバックはキーホルダー・マスコットだらけといった完璧な女子高生のスタイルをしていた。

「なんか･･････すっごぃ･･････」

　その女子高生・空兎は目の前に広がる光景に、素直に驚いていた。

　そんな彼女の様子を見て、思わずセレビアの顔が苦いものとなる。
自分は魔法使いのような格好をしている上、黒のサングラスとスーツを着た屈強な男達が倒れているこの異様な光景。

これが驚かないわけがないし、不審に思われるだろう。

　いくら廃ビルの屋上とはいえ、やはり晴天に雷を連発したのは良くなかったのだろうが、セレビアとしては、それを踏まえて早々に立ち去ろうとした矢先にこれだ。

通学、通勤時間帯というあまり余裕のないこの時に、まさかここまでやって来る物好きがいるとはあまりも予想外な展開だった。

「仕方ない･･････。ここは眠らせて、その隙に！」

　と、ぶつぶつと算段を企てていると、突然、空兎の方が声を張り上げた。

「あーーーーっ！！」

　あまりの大声にセレビアはやろうとしていた事を中断され、ドキッとさせられた。まさか企みを見透かされたかと、嫌な予感をしたが、大きく見開かれた空兎の目はセレビアの企み等ではなく彼女が持っている“本”を映していた。

「その“本”っ！」

「え？」

　まさか“本”のことを指されるとは思ってなかったようで、セレビアは呆気にとられた。タタッと空兎はセレビアに駆け寄り、“本”を強引に掴んでタイトルを確認する。


“奇跡の起こし方”


　そのタイトルを見て、空兎は目を輝かせた。