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 交通量の多い大通り。
その左右には過当競争の如く、本屋やコンビニ、ファーストフード店など、様々な店が並んでおり、結果、この街を活性化させている。

 その一方で、経営難から潰れてしまう会社もあり、残ってしまった廃ビルはそのまま若者たちの溜まり場か、夜の心霊スポットとして扱われるようになってしまう。

 そんな窓がほとんど割れ、埃とスプレーによる落書きに溢れたとある一つの廃ビルの屋上で、妙齢の女性、セレビア=J=ダルクは嘲笑に口を歪めていた。

 長身でありながら、地に着きそうなくらいの長い金髪をしており、それを右手で掻き撫でながら、眼下に映る男達を眼鏡越しに見下ろしている。

 男達の数は五人。皆、黒いスーツにサングラスという統一された服装で、なにより全員、格闘家のような逞しい体躯をしていた。

 だが、彼等全員とも、今は全身黒焦げで力尽き、地に伏せた状態となっている。
 こうなったのは全てセレビアの仕業だ。眼鏡のブリッジを押し上げながらクスクスと嘲笑う。

「美女の雷は刺激が強すぎたかしら?」

 自意識過剰にも聞こえる台詞だが、実際、彼女は余程美的センスがズレている人ではない限り、美人と呼ばれる容姿だ。

 だが、その格好は変わっている。大きな円形の縁をした黒いとんがりハットを被り、OL風の灰色のスーツの上に身長よりも大きい黒いローブを纏っている。

 そう、彼女はまるでファンタジーの世界に出てくるような魔法使いの格好をしているのだ。

「さぁてと、やっと邪魔者が静かになったところで・・・・・・」

 セレビアはローブの内側から一冊の“本”を取り出した。
本のタイトルは“奇跡の起こし方”。セレビアがコンビニのトイレで見つけたものだ。

「早くこれの封印を解いて、アレの在処を・・・・・・」

 そう呟き、“本”の表紙に描かれているタイトル部分に、細長い艶やかな指で触れようとしたところで、ふと、静寂だった空気が微かに揺れるのをセレビアは感じた。

 倒れていた男の一人が気絶から目覚め、立ち上がったのだ。
 視線を本に落としたまま、セレビアは不機嫌に呟く。