「“彼女”と同じことを言うのか?」

「俺にも言われたことですよ」

 懐かしそうに灰山が言う。ルミネの目つきが僅かに鋭さを増した。灰山は目を合わそうとせず、脇のテーブルに並べてられている武器の数々に手を伸ばす。

「奴等、結構やります。思ったより手間がかかりそうです」

 並べられている武器の中から拳銃を一つ手に取り、それを一通り品定めした後、リボルバーに銃弾を込めていく。

 それを眺めながら、ルミネは半分ほどに短くなったタバコを地面へと落とし、踏み潰して火を消した。

 そして新しいタバコに手を掛けようとする。

「止めとけよ」

 リボルバーに弾を込める作業を止めて灰山が声を飛ばす。突然、敬語が消えたことに同室の部下たちは驚き思わず作業を止めて顔を見合わせる。

「私が吸うのが羨ましいか?」

灰山が禁煙中だと知っての台詞だ。

「……そう…ですね」


 あぁ、羨ましいね。俺は、アンタが羨ましい。

 そうやってストレスが溜まればすぐにタバコを吹かすことができる。俺のように願掛けなんか気にしない徹底した現実主義者だ。

 何より、アンタは俺の惚れた女を奪った。

 ホント、羨ましいね……。