「間に合って良かったです。これを出すのは久しぶりだったので……」
背を向けたまま、変わらぬ口調でマリィは告げる。
マリィのいう“これ”とは、持っている得物のことだろう。クヲンと同じく黒い長柄だが、刃までも黒く染め上げられた三又の槍。
御伽噺に出てくる悪魔が持っているものが、そのまま出てきたようなものが今、マリィの手に握られていた。
「やっぱりお前、悪魔なんだな……」
改めて知ったという風なクヲン。その表情はどこか悲しい。だが、マリィはいつもの微笑でそれを受け流している。
そうしながらマリィは空兎に告げる。
「ごめんなさい、空兎さん。ここは譲ってもらえませんか?」
「え?」
一瞬目を丸くし、そして、その目を俯かせて空兎は一秒ほど黙考する。
それから顔を上げてマリィに向けて告げる。
「うん! 任せた! アタシはゴール目指すから!」
「はい、頑張ってください!」
ようやくこちらに顔を向けて笑顔を見せたマリィ。空兎は覆い被さっている仙太から這い出ると、彼の手を引っ張って走り出す。
そして、クヲンに向けて叫ぶ。
「バイバイ、クヲンくん!」
その笑顔を、クヲンは見れなかった。
背を向けたまま、変わらぬ口調でマリィは告げる。
マリィのいう“これ”とは、持っている得物のことだろう。クヲンと同じく黒い長柄だが、刃までも黒く染め上げられた三又の槍。
御伽噺に出てくる悪魔が持っているものが、そのまま出てきたようなものが今、マリィの手に握られていた。
「やっぱりお前、悪魔なんだな……」
改めて知ったという風なクヲン。その表情はどこか悲しい。だが、マリィはいつもの微笑でそれを受け流している。
そうしながらマリィは空兎に告げる。
「ごめんなさい、空兎さん。ここは譲ってもらえませんか?」
「え?」
一瞬目を丸くし、そして、その目を俯かせて空兎は一秒ほど黙考する。
それから顔を上げてマリィに向けて告げる。
「うん! 任せた! アタシはゴール目指すから!」
「はい、頑張ってください!」
ようやくこちらに顔を向けて笑顔を見せたマリィ。空兎は覆い被さっている仙太から這い出ると、彼の手を引っ張って走り出す。
そして、クヲンに向けて叫ぶ。
「バイバイ、クヲンくん!」
その笑顔を、クヲンは見れなかった。



