青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)

「間に合って良かったです。これを出すのは久しぶりだったので……」

 背を向けたまま、変わらぬ口調でマリィは告げる。

 マリィのいう“これ”とは、持っている得物のことだろう。クヲンと同じく黒い長柄だが、刃までも黒く染め上げられた三又の槍。

 御伽噺に出てくる悪魔が持っているものが、そのまま出てきたようなものが今、マリィの手に握られていた。

「やっぱりお前、悪魔なんだな……」

 改めて知ったという風なクヲン。その表情はどこか悲しい。だが、マリィはいつもの微笑でそれを受け流している。

 そうしながらマリィは空兎に告げる。

「ごめんなさい、空兎さん。ここは譲ってもらえませんか?」

「え?」

 一瞬目を丸くし、そして、その目を俯かせて空兎は一秒ほど黙考する。

 それから顔を上げてマリィに向けて告げる。

「うん! 任せた! アタシはゴール目指すから!」

「はい、頑張ってください!」

 ようやくこちらに顔を向けて笑顔を見せたマリィ。空兎は覆い被さっている仙太から這い出ると、彼の手を引っ張って走り出す。

 そして、クヲンに向けて叫ぶ。

「バイバイ、クヲンくん!」

 その笑顔を、クヲンは見れなかった。