青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)

「テメェ、俺が普通の人間だからって手加減してんのかぁ!? そいつはぁ、いい! テメェは大した偽善者ヒーローだ!!」

 その瞬間、ジョーの目が一瞬揺らいだ。その隙を灰山が見過ごすわけもない。

 ここぞとばかりに言葉で殴りつける。

「俺はテメェと違って、悪者だからな! “奇跡”って奴を起こすためにはどんな手段でも使うぜ! どんな犠牲を払ってもなぁ!!」

「……何故です」

 か細く、ジョーが呟いた。灰山の表情が訝しげに変わる。

「何故、あなたはそこまでして“奇跡”を起こしたいのですか?」

 荒ぶる灰山とは対照的に、ジョーのそれは実に穏やかだった。

 まるでそう、全てを癒し、優しく包むような森の静けさのような……

「テメェには関係ねぇ! どうせテメェは死んだ妹を“奇跡”で生き返らす度胸もねぇんだろ!?……いや、違うな。テメェは満足してるんだ! 妹の代わりが見つかったからよ!!」

 眼前に迫るナイフのように、言葉がジョーの心を抉る。

「あの天羽空兎ってガキ、テメェの妹にそっくりなんだろ?」

 何故、彼がそれを知っているのか、問いただす気すら起こらなかった。

「結局テメェは妹にそっくりなあのガキを守ることで、妹を救えなかったあの時の自分を慰めて勝手に満足してるだけだろうが! そんな偽善者に、俺の……俺の!」

 ポタッと赤い雫がジョーの口元に落ちた。

 口の中を切った灰山の血が言葉と共に一粒だけポツリ……


 涙のように零れた。