「ルミネ様、ここはあの者に協力を仰いでどうでしょう?」

 その言葉にルミネは僅かに視線を落とし、深くため息をつき、やむを得んな、という苦い表情をする。

「では、早速手配致します」

 ルミネの心情を悟った女性秘書が深々と頭を下げた。


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 ここが地下の牢獄とは思えないほどの明るい空間。

 娯楽こそ皆無だが、冷暖房とベッドがあり、自動洗浄型のトイレも常備されていた。

 食事はちゃんと三食定時毎に運ばれてくるし、その量と味も申し分ない。

 広さも、一人でいる分には充分だ。

 文句が一つあるとすれば、シャワーがあって欲しかったが、囚われの身としては破格の待遇に思えた。

(一体、どんな組織なのかしらね?)

 そう、セレビア=J=ダルクは考えていた。

 それは、あのクヲンとの戦いで負傷し、“本”を奪われたと同時に捕われた日からずっと疑問に思っていることだ。

 怪我も最高の医療スタッフの手による治療を受けられた。

 元々の傷が浅かったのもあるが、お陰でクヲンの攻撃で受けた傷はほとんど治った。

 セレビアならば魔法を駆使すれば、この地下牢から脱出できることは可能であろうが、今はそれが叶わない。

 セレビアの両手にはめられている鋼鉄の枷が原因だ。

 組織が開発した『魔法を封じる枷』だと、セレビアは聞いた。

 半信半疑だったが、実際、はめられてから魔法が使えなくなった。

 このことがこの組織の強大さと不透明さを改めて思い知ることとなった。

「はぁ〜」

 考えることに疲れたセレビアはベッドに腰かけ、壁にもたれ掛かる。

(あのコ達……どうしてるかしら?)

 天井の眩い蛍光灯に目を細めながら、セレビアは空兎と仙太の顔をそこに映し描く。そして小さく自嘲。

(調子がいいわね……出し抜こうとした分際で……)

 今さら戻れるはずはない。

 あの無垢な笑顔の元には……