丁寧な物言いだが、仙太が知りたいのは彼の名前よりももっと重要なことだ。

「あの・・・・・・撃たれましたよね?」

「えぇ、彼女を守ろうと思いましてね・・・・・・ほら、ここを」

 そう言ってヒーロー男・・・・・・緋上ジョーと名乗った男は、腹部の撃たれた箇所を指差した。

 確かにすでに止血しているものの、おびただしいくらいに衣服が赤く広がっている。

 どう見ても重傷レベルで、普通なら痛みだけで会話すらできない状態のはずなのに、この男は平然とした顔で「別に大したもんじゃないですよ」とでも言いそうな感じだ。

「あの、大丈夫なんですか?」

「ええ、急所は外れてますし、それに・・・・・・・・・」

 ジョーは一呼吸置いて、少し照れ気味に告白した。

「こうみえてもヒーローですから」

 リアクションが固まってしまった仙太に、空兎が嬉しそうに追い打ちをかける。

「ね! すごいでしょ!」

「ああ、凄いよ・・・・・・。色んな意味で・・・・・・」

 こんな状況でぼやく羽目になろうとは、露ほどにも思わなかった仙太だった。

「いやぁ、そんなに凄いもんじゃないですよぉ」

 頭を掻きながら照れ笑いするジョーに、困惑しっぱなしの仙太は質問を続ける。

「えっと・・・・・・あなたはヒーローだから拳銃で撃たれても大丈夫なんですか?」

「はい。ほら、テレビのヒーローも、皆さん丈夫じゃないですか。あれと同じです」

「テ、テレビのヒーローってあの変身したりするアレですか?」

「はい。巨大化したり、五人チームだったり、バイク乗ったりと種類は色々ですよね? 僕は単独ですし、巨大化もできません。バイクもまだ免許の教習中ですが、一応ヒーローです。あ、宇宙の刑事なんていう役職でもありません。まだフリーターです」

 気恥ずかしそうに語るジョーに仙太は唖然。だが、依然として空兎は、目をキラキラさせている。