「それじゃあ、僕はこれで……」

「んんぅ!んっんんっん!ーーっ!」

 鞄を持って部屋を出ようとする仙太を止めようとしているのか、マリィが何かを訴えかけている。口一杯食べ物を頬張ってるから言葉が出ないようだ。

「あ、あの………なにか?」

 マリィの言い分は大体想像はつきそうなものだが、その様子があまりにも必死なため思わず仙太が尋ねると、マリィは大急ぎで口の中のものをお茶で流し込んだ。

 「はふー」と幸せそうな顔をしたかと思うと、それを一転させて仙太に怒る。

「まだダメです!怪我は治りかけが大事と病院で聞きました!だから、今日も大人しくしてください!」

「いや、でも、これ以上ご迷惑かけるわけにもいきませんし……それに今日、一応、学校あるから行かないと」

「サボりましょう!健康第一です!」

「休むんじゃなくて、サボリですかぁ!!」

 思わずいつも空兎に突っ込むようにやってしまった仙太。マリィはどうやら「休み」と「サボリ」の使い方を素で間違えたようだ。

「え、え〜っと、理由もなくお休みするのがサボリで、理由があってお休みするのがお休み……あれ?お休みなのに、お休み? あれれ?」

(や、やっぱり、変わったコだ)

 一人言葉のどつぼにハマリ混乱しているマリィに仙太は唖然とする。

 やがて、それどころじゃないと自分で察したのか、眉間にしわを寄せて仙太に顔を近づける。

「と、とにかく、まだダメですからね!」

「は、はい………」

 マリィに凄まれ仙太はまた思わず返事をしてしまった。

 マリィの顔が微笑みに戻ると同時に、仙太はため息をついた。

「あ、でも、休むんなら学校に連絡しないと……」

「あ、だったら私が連絡してきてあげますよ」

 マリィが「任せてください」と言わんばかりに自分の胸に手を当てる。

「え?僕の学校知ってるんですか?」

「いいえ。でも、名前教えてもらえたら空を飛びながら探せます」

「……………すみません。今、飛ぶっていう、人間ではありえない動詞が聞こえたんですが……」

「あ、私……」