その微笑みに仙太は照れながら目を泳がせた。そして、何かを思い出したかのようにズボンのポケットを探るが、目的のものが見つからない。

「あ、あの僕のケータイ知りませんか?」

「あ、それならそちらに」

 マリィは、テーブルの上を指差した。そこには確かに仙太の携帯電話が置いてあった。

 ただし、落下の衝撃で壊れた姿でだが………

 ショックを隠しきれず一応、手に取って使えるかどうか確かめてみるが、案の定、使えない。

「まずいなぁ……空兎達に連絡できないや」

 仙太は、マリィに電話を借りようとしたが、部屋を見回してそれがないことに気付いて肩を落とす。

 そんな仙太の様子を見て、マリィが小首を傾げる。

「何かお困りですか?」

「えぇ、まぁ……ちょっと知り合いに連絡しようと思ったんですが………ケータイ、壊れて無理みたいで……」

「そうなんですか……」

 眉を八の字にして、マリィも沈んだトーンの声を出す。

「………僕、帰ります! 色々ありがとうございました!」

 気が動転したように、玄関へと向かおうとする仙太を、マリィは「ダメです!」と強く怒鳴って、仙太の首根っこをわしづかみして止めた。見掛けより凄い力である。

「怪我人はおとなしくしてなきゃダメなんです! お世話になったお医者様も言ってました!」

「で、でも、知り合いを心配させるわけには……」

「寝・て・く・だ・さ・い!」

「………………はい」

 マリィに迫力負けした仙太は、おとなしく布団へと戻っていった。

 それを見たマリィは、笑顔に戻っていた。