早く電話を切りたいクヲンは、訊きたいことだけを質問した。

「甲斐浜 仙太のことはわかった。あと、あの二人はどうしてる?」

『気になるか?』

「さっさと答えろよ、オッサン」

『チッ! 近頃のガキは年上に対する礼儀ってもんを知らねぇ……お前の心配するようなことにはしていない。さっさと“鍵”を手に入れろ』

「……わかってる」

 語尾と同時に、クヲンは電話を切った。

 折り畳み式ではない、黒いデザインの携帯電話をジッと見つめる。

「年上がそうだから、年下がこんなのになるんだよ」

 半ば絶望したような目と口調。

 クヲンは、携帯電話をポケットに納めると、公園の周辺をくまなく探し始めた。


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 切符を買い、駅のホームの椅子に並んで座って、電車が来るのを待っている間も、二人の間に会話はなかった。

「…………」

「…………」

 仙太も空兎も、お互いのことをチラチラと伺うだけで、自分から話そうとしないまま時間がどんどん過ぎていく。

 このままじゃさすがにまずいと感じたのか、仙太は辺りを見回して、話題になりそうなものを探す。

 ふと、自販機が目に留まった。

 話を作るきっかけが作れそうだった。

「あ、あのさ……」

「え!?」

 急に話しかけられてビックリしたのか、空兎は弾かれたような反応を示した。

「その……何か飲み物でもいるかな? 僕が奢るけど……」

「いえ………いいです。喉……別に渇いてないですから……」

 そう言いながら空兎は、視線を落として、俯いてしまった。

「あぁ……そうなんだ……」

 そこで会話が終わってしまった。

 また無言……しかもさっきより気まずくなってしまった空気が流れる。

 程なくして、電車がやって来る合図がホームに鳴り響いてきた。

「い………行きましょうか」

 ぎこちない口調で空兎が口を開く。仙太は、意外な表情で「う、うん」と返事をする。

 二人は立ち上がって、電車が目の前に来るのを、ジッと待った。

 遠くの方から警笛を鳴らして、電車がやって来た。

 その警笛が、仙太の耳には、何故かやかんの沸騰音によく似ているように聞こえた。