白いお粥。具が全くない素うどん。皿に一個だけ置かれている、マーガリンもジャムも備え付けられていないコッペパン。味付けがされている気配が全くしないモヤシ炒め。お椀に盛られた生卵。食べたら口中の水分を一気に吸収されそうになるまでパサパサに蒸かされたジャガイモ。皮も剥かれてない状態で皿に置かれている生ニンジン。

 それらが、所狭しとトレイをせめぎ合っているのだ。

「何の罰ゲームですか?」

 あまりにも無茶苦茶なメニューに仙太が思わずそんなこと言い出した。

 しかし、仙太の発言に特に気分を害した様子はないマリィは笑顔で告げる。

「お嫌いなものがなければいいんですけど……」

「あ、いや……別にこの中に嫌いなものはないんですけどね……」

「よかったぁ」

 トレイを仙太の膝の上に置くと、両手を合わせて、満面の笑みで安堵した表情をするマリィ。この時、仙太は「あ、罰ゲームとかじゃなくて、本気なんだ」と半ば諦め気味に思った。

「あとは……お口に合うといいんですけど……」

 マリィが不安そうに仙太を見つめる。その姿がいじらしすぎて、仙太は背水の陣に立たされた気分になった。

「い、いただきます……」

 ひきつった表情でスプーンから箸に持ち替えて、モヤシ炒めを一口。

 噛めば噛むほどに……………やはりモヤシ独特の歯応えしかなく、予想通り、塩、こしょうの味付けが全くされていない。

 念のために訊いてみる。

「あの〜……味付けとか、しました?」

「あじつけ?」

 初めて聞いた言葉という感じに、マリィは小首を傾げた。仙太の調子が狂う。

「いや、だから……塩とか、こしょうとかを掛けるとか、そういうのすることですけど」

「あぁ〜」

 そこでマリィは、的を得たという風に視線を上に逸らす。それから、ニッコリと笑って、仙太に答える。