青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)

 目を赤く腫らした空兎を、クヲンはソファに腰掛けた状態で迎えた。

「どうだ?」

「うん………大丈夫」

 何が「どうだ?」か、何が「大丈夫」か、それぞれに明確な意味はなかったのかもしれないが、二人の間はそれで通じ合っていた。

「そっか……」

 とりあえず安心したようにクヲンが立ち上がると、窓を開けてベランダに出る。

「どこ行くの?」

 空兎が尋ねると、クヲンが背を向けたまま答える。

「せっちを探しに行く」

「アタシも!」

「言うと思った……」

 そこでクヲンは振り返り、空兎の両肩に手を掛ける。

「ダメだ! お前はここで待ってろ!」

「やだ!」

「俺を困らせんなよ!」

「困らせる!ゴメン!……でも、アタシ……!」

 断固として引かない様子の空兎に、クヲンは大きな溜め息をついた。

 空兎の肩から手を下ろし、ベランダから部屋に戻ると、電話が置いてある場所へと向かう。

 登録してある番号にかけると、慣れた口調で話す。

「あ、白矢です。いつもお世話になっています。今日もハウスキーパーを頼みたいんですけど……はい、今すぐ…………よろしくお願いします」

 それで電話を切ると、空兎へと振り反って告げる。

「じきにハウスキーパーが来る。その人にお前を見張らせる」

 それを聞いて、空兎の目が見開いた。その目を──思わず逸らしたくなるその目をあえて受け止めて、穏やかに告げる。

「わかってくれ……ぶっちゃけ、今、俺……お前を守れる自信ないんだ……」

「………ゴメン、ついていっちゃ足手まといだよね」

 肩を落として俯く空兎。

 クヲンは、逡巡しながらゆっくりと空兎に近づき、彼女の両頬を持ち上げると───

「ん………」

 保健室のときより少し深く、強い───かといって一歩奥に踏み切れない半端なキス───

 それでも、空兎のさざ波立っていた心は次第に落ち着いていった。