様子がおかしい空兎に、クヲンは戸惑いを隠せなかった。

 何故なら彼女の目からは雨のように涙がポロポロと零れているのに、声色は全く普通なのだから……

「さっきから……止まらないんだ、涙………あはは……ヤバ、マジで脱水なんとかってのになるかも……あれ? ホント、止まんない………やだ……」

 空いている方の手の甲で何度も何度も溢れ出る涙を拭っていくが、無駄に等しかった。

 拭うのを放棄すると、涙はまたポロポロ、ポロポロと空兎の頬を伝い、膝の上へと零れ落ちていく。

「こ、これがホントの涙腺決壊ってやつなのかな? へ、変なの? 感情と体の反応がアンバランスだよ………まいったなぁ……病気なのかな? 今度、叔母さんに診てもらおうかな? あ、でも……せっちんのことなんて言おう……………きっと、凄い怒られそう」

 空兎の声のトーンが沈み始める。クヲンは、ただ黙って聞いていることしかできなかった。

 彼女の言葉を聞くのも“罰”と思い、ただじっと耳を傾けていた。

「叔母さん……凄い優しいけど、怒ったら、きっと凄く怖いよね?………なんか、想像できないけど、さ…………アタシ、家、追い出されたりして……フフフ、そうしたら、また一人ぼっちかぁ………」

 空兎の最後の一言は、どこか自虐的なものを孕んでいた。そこでクヲンは勘づいた。

「空兎、お前、また自分を責めてるんじゃないのか?」

 黙って聞くつもりが、思わず声をかけてしまった。空兎は押し黙る。図星のようだ。

「マジかよ………」

 言葉に出来ない感情がクヲンを支配する。