「……保健の先生、いないの?」
「あぁ、俺が来たときからいなかったぜ」
「ふーん………」
二人きり(正確にはキィもいるが空兎的にはペット感覚)とわかって、急に緊張し始める空兎。同じ二人きりでも仙太とでは芽生えない感情だった。
黙っていると、ますます緊張───この場合、ドキドキするという表現が正しいかもしれない。
とにかく落ち着かない。
外していた視線をクヲンの瞳に向ける。彼は真っ直ぐに空兎を見つめていて、空兎は、赤面しながらまたすぐに目を逸らしてしまう。
散々葛藤しながら、空兎は、目を逸らしたまま話し始めた。
すごく沈んだ口調で、話し始めたのだ。
「アタシね……中学の時…………イジメられてたんだよね」
自分を嘲笑するように、空兎は告白した。クヲンは微笑を浮かべたまま聞いている。特別な反応は示さない。
「きっかけはね、アタシが女バスの試合でミスしちゃったから……変に期待されてたから一年からレギュラーだったんだよね……けど、肝心の試合でミスしちゃってさ……それで負けちゃって……」
空兎の顔が膝に沈んでいく。くぐもった声で自嘲する。
「ダサいよね……そんなことで水かけられたり、悪口言われたり、髪切られたりするんだよ……でも、アタシは“嫌”って言えないの……ミスしたのは………アタシだからさ………」
空兎の震える肩を、クヲンはじっと見ている。何か声をかけるという気配はない。
それを悟ってか、空兎が続ける。
「だから、アタシ、強くなるしかなかったの……どんなことされても耐えれるくらいに強く……三年間、乗り切ったんだよ」
顔を上げて天井を仰ぐ空兎。クヲンの目から見て、その表情は、どこか誇らしそうに見えた。
しかし、その表情が次の瞬間、陰を落とす。
「でもね、今も時々、夢に出てくるんだ……んで、すごいブルーになる……変だよね……英語の単語や数学の公式なんかは、すぐ忘れちゃうのにさ、こんなことはずっと覚えてるんだよ……ムカツクよね……」
ギュウッと、シーツを掴んでいた空兎の手に力がこもる。
「あぁ、俺が来たときからいなかったぜ」
「ふーん………」
二人きり(正確にはキィもいるが空兎的にはペット感覚)とわかって、急に緊張し始める空兎。同じ二人きりでも仙太とでは芽生えない感情だった。
黙っていると、ますます緊張───この場合、ドキドキするという表現が正しいかもしれない。
とにかく落ち着かない。
外していた視線をクヲンの瞳に向ける。彼は真っ直ぐに空兎を見つめていて、空兎は、赤面しながらまたすぐに目を逸らしてしまう。
散々葛藤しながら、空兎は、目を逸らしたまま話し始めた。
すごく沈んだ口調で、話し始めたのだ。
「アタシね……中学の時…………イジメられてたんだよね」
自分を嘲笑するように、空兎は告白した。クヲンは微笑を浮かべたまま聞いている。特別な反応は示さない。
「きっかけはね、アタシが女バスの試合でミスしちゃったから……変に期待されてたから一年からレギュラーだったんだよね……けど、肝心の試合でミスしちゃってさ……それで負けちゃって……」
空兎の顔が膝に沈んでいく。くぐもった声で自嘲する。
「ダサいよね……そんなことで水かけられたり、悪口言われたり、髪切られたりするんだよ……でも、アタシは“嫌”って言えないの……ミスしたのは………アタシだからさ………」
空兎の震える肩を、クヲンはじっと見ている。何か声をかけるという気配はない。
それを悟ってか、空兎が続ける。
「だから、アタシ、強くなるしかなかったの……どんなことされても耐えれるくらいに強く……三年間、乗り切ったんだよ」
顔を上げて天井を仰ぐ空兎。クヲンの目から見て、その表情は、どこか誇らしそうに見えた。
しかし、その表情が次の瞬間、陰を落とす。
「でもね、今も時々、夢に出てくるんだ……んで、すごいブルーになる……変だよね……英語の単語や数学の公式なんかは、すぐ忘れちゃうのにさ、こんなことはずっと覚えてるんだよ……ムカツクよね……」
ギュウッと、シーツを掴んでいた空兎の手に力がこもる。



