青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)

 蛇口から流れ落ちる水の音に混じって、クヲンの静かな囁きにも似た声が、仙太の耳に届いた。

「羨ましいな、せっち」

「え?」

 何故か既視感を覚えながら、クヲンからそむけた顔を戻す。クヲンは、流し台に視線を落としたまま皿を洗っていた。

「あんなコ、そうそういるもんじゃないぜ」

「確かに……あんな無茶苦茶な性格は珍しいと思うけどさ……なんで羨ましいのさ?」

 仙太の質問が可笑しかったのか、クヲンは突然笑いだした。

「ククククッ、やっぱおもしれ! 空兎もせっちも! やべぇ……ちぇ、なんか悔しいな……」

「? どういうこと?」

「教えてやんね!」

 イタズラ好きなクヲンの顔が表立った。

 それから、しばらく二人は黙々と皿洗いを続けていく。

 ふと、仙太が先ほどの既視感の正体を思い出す。

「……さっきの言葉、緋上さんにも同じこと言われた」

「ん?」

「僕のこと『羨ましい』っての……」

「あぁ……」

 それからまた沈黙訪れる。

「っで、キスしたの?」

 つるん………パリン!

 今度はキャッチに失敗した皿は、無惨に砕け散った。

「……ごめん」

「ドンマイ、せっち」