青空、ハレの日☆奇跡の条件（加筆修正中）

　そこには、皿が置かれているが、そこに仙太が残しておいたピザはない。代わりにメモ用紙が一枚置かれていた。仙太は、そのメモを手にとって読んでみる。

『美味しかったです。ありがとうございました。』


「ジョーさん……ピザ食べてくれたんだ……良かったぁ」

　潤んだ瞳と、安堵しきった声。立ち直ったように見えたとしても、空兎なりに気を張りつめていたようだ。

「やったよ！せっちん！」

　喜びのあまり空兎は仙太に抱き付いた。空兎の両腕は仙太の体を力一杯抱き締めているが、仙太の手はどうしていいか分からず、わなわなと泳いでいる。

　彼女の柔らかい胸が仙太の胸板と密着して、仙太は先程の気恥ずかしさと気まずい気分をいっぺんに再発させた。

　脈動する心臓が驚くくらい高鳴っている。

「あは、せっちんも嬉しいんだよね！ うんうん、わかるよっ！」

　仙太の高鳴る胸の鼓動を感じた空兎がそんな勘違いをするが、仙太はその方が好都合だと思って、黙っておいた。

　口が裂けても、空兎に抱きつかれたからそうなったとは言えなかった。

　そんな二人の様子を玄関からクヲンが微笑を浮かべながら眺めていた。


　どこか、羨ましそうに……




　ジョーの安否を確認を最後に、本日は解散の予定だったが、やはり仙太は、まだ今のままでは空兎と二人きりというのは少し気が引けた。

　ジョーの部屋を後にし、帰路につく中、仙太はクヲンに話しかけた。

「ねぇ、クヲン。もし、良かったら、ウチに夕食でも食べにこないか？ 母さん、いないし遠慮はいらないよ」

「賛成ーー！あ、どうせならクヲンくんの転校祝いしよっ！ ねっ？」

　仙太の誘いを空兎が後押したのは、仙太としては助かった。

　クヲンは、悩む素振りを見せているが、心の中ではもう答えは決まっているようだ。

　しかし、返ってきた答えは、少し意外なものだった。

「だったらさ、俺ん家でやらない？」

　自信を持った笑みでクヲンが二人を誘った。