そして、再びジョーに突撃。
 しゃがんでいる体勢のままのジョーは、その突撃を全く身構えることができず受けてしまった。

 大きく10数メートルは吹き飛び、そこからアスファルトを跳ねるように転げ回ったジョーは最終的にうつ伏せに倒れて動かなくなる。

 ライダーはその場でバイクを停止させると、腰のホルスターから黒光りするサイレンサー付きの銃を取り出して、ゆっくりとジョーに歩み寄った。
 ライダーが完全にジョーを捉え、いつでも発砲できる距離まで接近しても、ジョーはピクリとも動かない。

 ついにその距離は、ライダーが足蹴に出来る所にまで縮まった。

「さすがに死んだか……」

 フルフェイスのヘルメットにでも仕込んであるのか、合成された音声がまた性別を不明なものとする。

 ライダーはしばらく倒れている様子を伺っていたが、

 パシュッ。

 極力抑えられたサイレンサー特有の銃声が響く。
 弾丸はジョーの右足に撃ち込まれたが、僅かもそれが動くことはなかった。

 弾丸が撃ち込まれた足からは鮮血が滲み出て、灰色のズボンを染めていった。
 ジョーが全く動かないことを確認したライダーだったが。

 パシュッ、と左腕。
 さらに右手。
 そして背中に二発の弾丸を撃ち込んだ。
 だが、それでもジョーは僅かも動かなかった。

「本当に死んだようだな」

 ようやく認めたという感じで銃をホルスターにしまい、ライダーはフルフェイスのヘルメットを脱いだ。

 息苦しそうに顔を出した無精髭が印象的な男───灰山は深呼吸を一つして、倒れているジョーを見下ろした。

 そして、ライダースーツのジャケットの内ポケットから携帯電話を取り出す。

「ボス、任務完了です。………はい。………はい、わかりました。それと───────」

 灰山の電話は数分に及び「それでは失礼します」という言葉で終了し、電話を切った。
 電話の内容せいか、灰山は妙に苛立っていた。
フルフェイスのヘルメットを投げつけても尚それは収まることはない。

 やりきれない怒りで禁煙を破りたそうに手を泳がせたが、生憎と手持ちに煙草はない。
 代わりに銃を手にする。