青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)

 軽く睨むクヲンだが、マリィには伝わってないようだ。「まぁ、いいや」とクヲンは公園を何気なく見回した。

 そして、その場に流れる異質な違和感に気付く。

(俺達以外、人がいない……?)

 妙な気配が空気に乗ってクヲンの肌にジワジワ感じ始める。
 とりあえずマリィをベンチから立たせて周囲に気を張り巡らせていると、公園のあちらこちらの茂みから彼らは出てきた。

 あのサングラスにスーツ姿の男達だ。

(うわー)

 心の中で軽く叫んでみたクヲンは、背中でマリィを隠して、徐々に前方に集まってくる黒服の男達と対峙した。

 黒服の男達の動きが止まると同時に漂う異様な緊迫感に、思わずクヲンはひきつり笑いをしてしまう。

(……こんな格好してるからって、いきなり拳銃とか出さないよな?)

 クヲンの儚い望みは、黒服の男達が懐から一斉に取り出した拳銃によって見事に打ち砕かれた。

(……まさか撃たないよな?)

 そんな一分の望みも黒服の男達は銃口をクヲン達に向けることで粉砕してくれた。

「マジかよ」

 ひきつり笑いから真顔に戻ったクヲン。
 耳を塞ぎたくなる轟音が公園中に響き渡る。
 発砲された大量の弾丸が二人の背後にあったベンチを蜂の巣にしたが、そこに二人の姿はなかった。

 発砲を止め、左右を見回す黒服の男達だが、クヲンの声が聞こえたのは背後からだった。

「危ね~……」

 黒服の男達は、振り返ると同時に驚愕した。
 そこには背中から白鳥を思わせる白き翼を生やした紛れもない天使の姿をしたクヲンが立っていたからだ。
 その頭上には天使を証明する黄金に光る輪も確かに浮かんでいた。

 そしてマリィは猫のように首根っこをクヲンに片手で掴まれている。
 銃弾が放たれる際、クヲンが間一髪で天使の姿に戻り、一瞬にして黒服の男達の頭上を飛び越える時に一緒に掴まれたのだ。

 とはいえギリギリ。
 ここは黒服の男達の気が動転しているうちに逃げるのが賢明だった。

「自由への逃走!」

 踵を返して走り出す。少し反応が遅れた黒服の男達が追跡しながら再び発砲するが、的が素早くて当たらない。

「これってかくれんぼっていうものでしょうか?」

「鬼ごっこな」