青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)

 内心で毒づき、走りながら辺りを見回す。
白い息がどんどん大きくなるが不思議と疲労は感じない。

 10数分程、クヲンは、手当たりしだいに走り回って商店街に差し掛かった頃、捜していた悪魔はようやくというか、呆気なくというか、とりあえず見つかった。

「なにやってんだよ……あいつは」

 一気に疲労が圧し掛かってきたクヲンは、崩れ落ちる両腕を腿で支えながら呼吸を整える。
一方のマリィだが何故か二等身大のサンタクロースの人形に興味津々のようだ。
 そんな彼女に歩み寄り、なんとなく頭をはたいてみた。

「ふぁ……あ、お久しぶりです」

「二度目はウケねぇよ」

 同じボケを繰り出すマリィを突っ込むクヲンは、一回目よりも少し暖かい。

「つーか、何してんだよ?家にいろって言ったろ?」

「ごめんなさい。ちょっとお散歩してたら何か楽しそうな音楽が聴こえてきたのでつい……」

 確かに今、この商店街ではよくクリスマスにちなんだ曲がかかっており、マリィにとってはそれが珍しいものに聴こえたのだろう。

「お前アレだな。頭に超絶がつく天然だな」

「天然? あ、さっきそこのお魚屋さんで魚は天然モノがいいって聞きました! ってことは、私は良いものなんですね!」

 クヲンの嫌みもマリィには通じていない様子。
ここまでくると気にせずそのまま受け流すのが常套な選択。もはやクヲンもマリィの扱いも慣れたものである。

「そんじゃ、そろそろ……いや、焦ることもないか」

 このクリスマスムードな光景を見て、クヲンの気持ちが変わった。

「この辺、ちょっと見て廻るか?」

「はい!」

 その問いを待っていたかのように、マリィは即答した。


§


 定番のクリスマスソングが流れる商店街を、天使と悪魔が並んで歩いていようとは一体誰が思うだろう。

 制服まま飛び出したクヲンはともかくとして、明らかに彼より薄着なマリィは、この寒空の中でも元気だった。

(悪魔って寒さに強いのか?)

 そう思わざるを得ないくらい今のマリィは、はしゃいでいる。
 見ているクヲンが恥ずかしいくらいだ。