それを見てクヲンは「お前のせいなんだけどな……」と思ったが、それは心の中だけに留めておいた。
そして、ようやく朝日が見え始めた頃、クヲンはマリィに部屋にいるように告げ、自分はその年最後の学校へと登校した。
玄関から出ていくクヲンの背中を、マリィは微笑みながら見送った。
「ありがとうございます、クヲンさん」
主のいなくなった部屋でマリィが小さく呟くと、不意に朝日が窓のカーテンの隙間から射し込んできて、その眩しさに目を細める。
たまらずカーテンを開けてみると、ハラハラと、白くて丸いものが空から落ちてくるものが目に入った。
「雪……?」
まだ小降りだが、確かにそれは雪だった。
§
小降りとはいえ寒空に雪というのはクヲンにとってはテンションの下がるものだった。
加えて寝不足。
「寝たら凍死するな、俺」
そうなる前にまだ暖かい教室へ辿り着こうと考えたクヲンは早朝から一人マラソン大会をする羽目になった。
その背後で見つめる視線──サングラス越しに見つめる一人の男の双眸にクヲンは気付かなかった。
§
修了式は体育館で行われ、その後、教室で担任教師が「冬休みこそ受験の第二ラウンドや~」などといって生徒達を一気に脱力させたが、寝不足のクヲンはうつ伏せになって眠っていたので関係なかった。
予定通り、学校は午前中で終わった。
§
クヲンが帰る頃には、雪は少し強くなっていた。
積もり始める道をクヲンは駆け足で帰路につく。
「とっととあの悪魔のツケを払わないとな……」
言葉とは裏腹に楽しそうなクヲンの足はさらに速まっていく。
一人なので堂々とアパートへ帰る。
そして、ノブに手をかけたところで、ふと嫌な予感が過った。
(………まさか)
一瞬止まったその手で勢いよく玄関が開かれる。
そこに、マリィの姿はなかった。
「マジ、かよっ!」
叫ぶと同時に部屋の中に鞄を投げ入れて、クヲンは走り出した。
何処へ行ったのか検討もつかないが、走らずにはいられなかった。
感情の赴くままに足を動かす!
今のクヲンは自然とそれができた。
(ったく、あの天然娘、何処だよ……?)
そして、ようやく朝日が見え始めた頃、クヲンはマリィに部屋にいるように告げ、自分はその年最後の学校へと登校した。
玄関から出ていくクヲンの背中を、マリィは微笑みながら見送った。
「ありがとうございます、クヲンさん」
主のいなくなった部屋でマリィが小さく呟くと、不意に朝日が窓のカーテンの隙間から射し込んできて、その眩しさに目を細める。
たまらずカーテンを開けてみると、ハラハラと、白くて丸いものが空から落ちてくるものが目に入った。
「雪……?」
まだ小降りだが、確かにそれは雪だった。
§
小降りとはいえ寒空に雪というのはクヲンにとってはテンションの下がるものだった。
加えて寝不足。
「寝たら凍死するな、俺」
そうなる前にまだ暖かい教室へ辿り着こうと考えたクヲンは早朝から一人マラソン大会をする羽目になった。
その背後で見つめる視線──サングラス越しに見つめる一人の男の双眸にクヲンは気付かなかった。
§
修了式は体育館で行われ、その後、教室で担任教師が「冬休みこそ受験の第二ラウンドや~」などといって生徒達を一気に脱力させたが、寝不足のクヲンはうつ伏せになって眠っていたので関係なかった。
予定通り、学校は午前中で終わった。
§
クヲンが帰る頃には、雪は少し強くなっていた。
積もり始める道をクヲンは駆け足で帰路につく。
「とっととあの悪魔のツケを払わないとな……」
言葉とは裏腹に楽しそうなクヲンの足はさらに速まっていく。
一人なので堂々とアパートへ帰る。
そして、ノブに手をかけたところで、ふと嫌な予感が過った。
(………まさか)
一瞬止まったその手で勢いよく玄関が開かれる。
そこに、マリィの姿はなかった。
「マジ、かよっ!」
叫ぶと同時に部屋の中に鞄を投げ入れて、クヲンは走り出した。
何処へ行ったのか検討もつかないが、走らずにはいられなかった。
感情の赴くままに足を動かす!
今のクヲンは自然とそれができた。
(ったく、あの天然娘、何処だよ……?)



