青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)

 丁度、口に入っていたものを飲み込んだところだったマリィは、その言葉にキョトンとする。
 そんな彼女の様子を目の端で捉えつつもクヲンは続けた。

「天使の役目ってのは一人でも多くの人間を幸せにする……ってことなんだけどよ。俺、それがちょっと納得いかなくてさ。……なんで“人間”なんだろって……」

 マリィは黙ったままだ。
 何も考えてないようにも見えるが、次のクヲンの言葉を待っているかのようにも見える。
 クヲンは、後者と解釈した。

「勿論、俺の偏見だけで判断するわけにはいかないからさ、だから少しでも人間のこと知ろうと思って、「白矢クヲン」って名乗って、今、中学校ってやつに通ってるが……」

 クヲンがそこまで話すと、そこでマリィが口を開いた。

「くをん?」

 一言そう呟き、そして目を輝かせた。

「あなたの名前、初めて聞きました……はくやくをんさん……良いお名前ですね」

「そ、そういや名乗ってなかったな……わりぃ。あ~正確には「クヲン」だけだ。この世界じゃ名字ってのが必要だからな」

「はい! クヲンさん! 私はマリィです!」

「いや、お前の名前は知ってるんだけどな……」

 今にも身を乗り出さんばかりの勢いのマリィに気圧されて、クヲンは狼狽する。
 しかし、疑問点が一つ芽生えた。

「お前、俺が天使とか言ってるけど疑わないわけ? つか、普通引くだろ?」

「そうなんですか?」

「……いや、いい。俺が悪かった」

 相変わらずのマリィの調子に、クヲンは目を逸らした。
 それから数秒、沈黙で時が流れ、今度はマリィが口を開いた。
 いつものようなおっとりとした口調には変わらないが、どこか懺悔を聞いている感じにクヲンは聞こえた。

「実は……私、悪魔なんです」

 逸らした目が自然と元に戻る。
 クヲンの瞳には、正座をするマリィの清楚で可憐な姿が映し出されていた。

「悪魔の役目は一人でも多くの人間を不幸にすること……。私はその教えに従って多くの人間を不幸にしてきました……」

 天使であるクヲンとは正反対の行い。マリィの懺悔にも似た告白は続く。