瞬間、表情が一変する。

「セレビア・・・・・・。あの魔法使いには気をつけた方がいいぜ」

 「え?」「ふぇ?」
 二人の言葉が重なる中、クヲンの言葉はさらに紡がれる。

「あの魔法使いは“神杯”に対して異常に執着している」

「あ、そういえばセレビアさんも本欲しがっていたし、一緒に“鍵”探そうって言ってきたのもセレビアさんだ!」

 「だろ!」とクヲン。そこへ仙太は、

「でも、僕は起こしたい“奇跡”ってのがないからセレビアさんに譲ってもいいんじゃないかなって思うけど?」

 と言ってすでに譲る気モードになっている。「なるほどねぇ」とクヲンが言い、視線の先を空兎に変える。

 答えを求められているのがわかって空兎は「アタシは……」と口篭る。
 そこへ助け船を出すかのようにクヲンが口を開いた。

「先に言っておくが、俺は空兎の“奇跡”なら叶えるのに協力するぜ」

 二人とも今度は言葉に出ない驚き。空兎に至っては仄かに頬が赤い。

「あるかもわかんねぇ“鍵”……キィが見つかったんだ、それに“本”もな。俺の中では充分どころか釣りがくる。それに俺は元々求めていたのは“神杯”じゃなくてスペクタクルなんだからよっ!」

 そこで一呼吸置いたクヲンは、その双眸を……。妙に魅力的なその瞳を空兎に固定する。

「だから感謝してんだ……」

「~~~っ!」

 仙太の目からでも空兎の顔はハッキリと真っ赤になっているのがわかる。
 空兎は口を金魚のようにパクパクさせて、やっと出た言葉が、

「う~~るさい!」

(………なんで?)

 クヲンの前の言葉とまるで噛み合っていない事に仙太は内心で呆れた。
 対してクヲンは一瞬、時を止めたかと思うと、次の瞬間、まるで栓の抜けた水道管のように一気に吹き出した。

「プッハハハ! お前アレか? 流行りのツンデレって奴か?」

「ち、違う~~!」

 真っ赤になりながら必死に否定する空兎は仙太にとっても少しおかしく見えた。

「んで、どうするんだ?」

 クヲンにそう問われて、空兎は急におとなしくなった。

(え? 空兎……何か叶えたい“奇跡”があるのか?)

 仙太が意外に思う中、空兎が徐に口を開いた。