ジョーが病院へ駆けつけたときには、すでにハルナの全身にはあらゆる器機が備え付けられており、病状が只事ではないこと示していた。

 医師を中心として複数の看護師が懸命の治療をしている中、ジョーはガラス越しに只見ていることしかできなかった。

 やがて、一人の女性看護師が状況の説明をしてくれるということでジョーは別室へと案内された。

「え……あの会場に?」

「えぇ………」

 ハルナは院内夏祭りの会場で、発作を起こして倒れているところを見回り中の警備員によって発見されたという。

「よっぽどお兄さんと一緒に行ったのが嬉しかったんでしょうね……。それ、ずっと被っていたのよ」

 夕食の時や、夕食後の点滴の際も付けっぱなしだったというそれは、ジョーがプレゼントしたヒーローのお面だった。ハルナはそれを気に入って、ずっと斜め掛けにして被っていたらしい。

 そう、倒れるその寸前まで……。

「………ハルナは何故そんなところへ?」

 自分の手元に戻ってしまったヒーローのお面を見つめながらジョーは尋ねたが、その看護師は「さぁ?」と首を傾げるだけだった。

 ジョーの記憶が正しければ夏祭りの時間帯は10時から17時までとなっている。
今ではやってるはずもなく、ハルナが思い出に浸るためにあそこへ訪れたというのも性格上考えにくい。

 では、何故……?

 記憶の糸を辿り、ふと思い出したのはあの時のハルナの言葉。


 「………だ」


「あの、笹ってまだありますか?七夕の」

「え? えぇ、ありますよ。あれは7月7日まで置いておくつもりですから」

 それを聞くなり何かがジョーの中で合致した。
 そこに行けば何かわかるかも知れない、と。

 ジョーはその看護師に無理を承知でそこへ行かせてくれとお願いすると、看護師は少し躊躇いながらも承諾した。


§


 その看護師の付き添いの元、訪れた院内夏祭り会場。
 すっかり出店類は片付けられており、ガランとしていた。
 そして中央にそびえ立っているのが笹だ。色とりどりの鮮やかな短冊は、ジョーがお面を買いに来たときよりも増えている。

 その中でジョーは目的のものがないかを探す。