「………ぅあぁうぁ!!」

 突如、ハルナが胸を押さえて痙攣し始めた。
 ジョーが初めて見る発作だ。
 ハルナは車椅子から転げ落ち、周囲の患者や付き添い人、看護師達も騒然となる中、ジョーは妹をただ抱き起こすしかできない。

「ハルナ!」

 懸命にジョーが呼び掛ける中、近くの男性看護師が駆けつけ、適切な処置を施してくれたため最悪の事態にはならなかったが、それでもジョーの心労は変わらない。

「お……にぃ……」

 顔を蒼白させて手を弱々しく伸ばしてくるハルナの手を、ジョーは握ってあげることしかできなかった。


 結局その日、ジョーがハルナの病室に入れたのは正午過ぎだった。
 ベッドに横になって手には点滴。実に弱々しい姿だが、顔色は良さそうなのでジョーは少し安心した。

「あははっ! やっちゃったね!」

「ハルナ……」

 ハルナは明るい口調だが、ジョーは暗い。目の前であのような発作を見せつけられては当然だ。

「なぁに? 暗〜い顔してさぁ!」

「………」

 気まずい沈黙が流れる中、徐にハルナは、視線をジョーとは反対側を向ける。

「……初めてじゃないんだ…………あれ」

 ハルナの口から明かされた告白に、ジョーは言葉を失う。

「最初はさ……すぐに治まったんだよ。だからナースコールも押さなかった……。気のせいだって思ってたし……けど、ね、それは気のせいなんかじゃなくてね……どんどん酷くなってね……」

 語尾にいくにつれて、ハルナの声に涙が混じる。それでも、ジョーは黙って彼女を見つめ続けた。

「でもね私、我慢できたんだ……このイベントが終わったらちゃんと医者や看護師の人にも言おうって決めてたんだよ……けど………ダメだったなぁ~」

 溢れる涙が頬を伝い、零れる。点滴が刺さってない方の手で不器用に拭うも追いつかないほどに。

 それでもハルナは笑っていた。
 いくら涙が溢れようとも、口元だけは精一杯の笑みを作っていた。

「ねぇ、お兄ちゃん……。私、死んじゃうのかな?」

 ハルナのその言葉は一番聞きたくなかった。
 だから即座に否定しようとジョーが口を開くが、言葉の途中でハルナの言葉が重なる。