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 1/2になったミートパスタを少しは突っ込まれるかと思えば、空兎もクヲンもそんなこと関係ない勢いで、仙太の料理に舌鼓を打っていた。

(心配して損した・・・・・・)

 腹に入ってしまえば同じということだろうか。とりあえず仙太も、それにフォークを巻いて口に入れる。

 我ながら悪くない味だと思うが、それを嬉しく思わないのは向かい側にいる二人の様子が妙に気になるからだろうか。

「ん? 何? せっちん、こっち見て」

「いや、な、何でもない・・・・・・」

 そう、何でもないんだ、と仙太は、この気持ちは自分の気の迷いだと言い聞かせて、空兎に向けていた視線をクヲンに向ける。

「そういえばとっておきの情報ってなんだよ?」

 するとクヲンは、まるでそれが来ることを予期していたかのようにフォークを指に見立てて「チッチッ」と振り、

「慌てなーい慌てない。楽しい昼食は始まったばかりなんだからよ!」

 と、仙太達の調子を狂わせた。
 そして、空兎と仙太、二人の顔を交互に見合わせて悪戯心をくすぐらせる。

「なぁ、二人の馴れ初めって奴を教えてくれよ」

 間髪入れずに、仙太が咳き込み、空兎はキョトンとする。
クヲンは、そんな仙太の反応に爆笑するのだった。

「な、馴れ初めって言われも、一緒に暮らし始めたのは、つい最近の話だし……」

 仙太が口篭ると、クヲンは「ノンノン」と、先程よりも大袈裟にフォークを振った。

「そうじゃねぇって。お前らが出会って間もない頃だ!」

「そ、そんなの覚えているわけないだろ! 中学の時が限界だ!」

 そう、確か初対面事態が中学の時のはず・・・だ、と仙太は思っていた。
 だが、文句があるとばかりに、突如として空兎が立ち上がる。

「ひっどーい、せっちん! 私との思い出が中学までなんて!」

 思いも寄らなかったその発言に、仙太は焦り出すが、彼女の記憶違いの可能性もある。

「じゃあ、君はそれ以前の思い出があるのかよ?」

「ない!」

「なら、「ひどい」とか言うなよ!」

 いつものやり取りが行われたその後、結局、仙太の曖昧な記憶の元、クヲンに話さざるを得なくならなくなった。

 じゃないと、肝心の本題が進みそうにないからだ。