(……度、入ってないじゃん)

 マレストの伊達眼鏡ぶりに苦笑しながら自分もそれを掛ける。金髪も少し伸ばそうかなと、この頃考え始めた。単にマレストを救えるか願掛けしてみたくなったのだ。

「あなたが責任を感じることはないのよ」

 あの若い女性はそう言ったが、もう関係なかった。
 そう、これは彼女自身のけじめの問題だった。

「マレスト………必ず帰ってくるからね」

 あの森でセレビアは誓った。


 ……………


 あれから四年の月日が流れセレビアは、“奇跡を起こせる宝”の存在を知り、世界各国を旅し、日本へと辿り着いた。

 そして、この地で“奇跡を起こせる本”の存在を知ることとなる。
 藁にもすがる想いでしがみついているそれを、誰にも譲る気はない。

 これが、セレビアが起こしたい“奇跡”である。


§


「………随分と昔の夢を見てたようね」

 ビルの屋上で思い出で浸るうちに、いつの間にか眠りに落ちていたセレビアは一人、寒さに身を震わせた。