まずは冷蔵庫と冷凍庫の中身を確認。使えそうな材料を慣れた目で見極めていく。

『あり合わせのもので、なんとかなりそうだな・・・・・・。あ、肉がない。まぁ、魚があればいいか。でも、空兎はなんて言うか・・・・・・。ま、いっか・・・・・・」

 などと呟きながら即座にメニューを頭の中で構成して、時計を見る。

 時刻は17:28。

 料理を始めるには丁度良い時間帯だ。

 冷蔵庫から玉葱とキュウリ、そしてトマトを取り出し、最後にメインの魚を冷凍庫から取り出そうとした所で、仙太の手からキュウリが何者かに奪い取られた。

その何者かは言うまでもない。

「せっちんんんんんんっ! 何、野菜達と戯れてんのよ!!」

 語尾と同時に、奪ったキュウリを一噛りする風呂上がりの空兎。

 Tシャツにショートパンツ、タオルを肩にかけた完璧な風呂上がりスタイルだ。キュウリを噛んだカリッという心地良い音が響いたが、彼女の表情は不機嫌そのものだ。

「いきなり現れて、貴重な食材を奪うな、食べるな・・・・・・。つーか、僕が夕飯の用意をするのが何か悪いの?」

「今は夕飯より、スペクタクル! さぁ、こっち来る!」

 個人的な言い分を一方的に押しつけ空兎は、強引に仙太を元の居間へと引っ張っていった。