青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)

「とりあえず落ち着けよ。………まぁ、なんだ。穏健派じゃないけど、持論は言えるぜ。それはな、『敵なんかいなくても、魔法使いは生きていける。世の中そんなものさ』ってな。確かに魔法使いってのは、どちらかといえば戦闘に特化している。けど、それだけじゃないだろう。便利なものは他にもいっぱいある……じーさん達が言うように、それだけでいいんじゃねぇか?」

 初めて聞いたマレストの持論。セレビアの心の中が暖かくなった。
 そして、やはり思う、「彼が師でよかった」と。

「なぁ、考え直してくれよ……。何ならこんな格好、止めたっていいんだからよ?」

 ヒラヒラとハットを脱いでみせるマレスト。それは、魔法使いにとって「戦闘の意思なし」という意味である。

その意味を知ってか、向こう側の険が僅かだが消えたような気がした。
 戸惑いながらだが、マレストに倣うかのように、他の者も次々にハットを脱ぎ始める。中には若い女性らしき人も混じっていたが、後はほぼ老人であった。

 交渉はこちら側の優位に進んでいるようにセレビアには見えた。殺気剥き出しだったあちら側は徐々にだが、それを削がれつつある。

 ―――かに思われた。


 ビュン!


 まるで光線でも撃ったような、空気を焼いたような音が鳴り響くと同時にマレストが片膝をついて倒れた。肩を撃ち貫かれたのだろう、一瞬にして赤い閃光が走るのをセレビアは見た。

 師の危機に動きたかったが、体が凍りついたかのように動けない。代わりに若い女性や老人達が駆け寄っているが、セレビアだけは動けない。

 せめて、狙撃主の顔すら見てやろうかと思ったが、その狙撃主の次のターゲットは近場にいた老人の脳天だった。

 またあの音が響いた時には、老人はすでに仰向けに倒れて絶命していた。
 マレスト達も含めて、向こう側もその光景に息を呑んでいる。
これはセレビアの推測だが、恐らく狙撃主は笑っていることだろう。

「やろっ!」

 沸々と沸き上がる怒りを、マレストは狙撃主にぶつけるが、狙撃主は赤い閃光の射手を止めようとはしなかった。瞬く間にマレストと若い女性以外の老人達、あとは味方であるはずの、向こう側の者まで無差別虐殺を始めた。

(な、何なの!?)