「えっと……確認するまでもなく、それ僕のあだ名だよね?」

「え? ダメ? 可愛いと思うんだけどな~」

 心底残念そうに落ち込むクヲン。
別にダメではないと仙太は思ったが、口に出すのも憚られたので止めておいた。

 項垂れる彼の姿を見る、ちょっとしたイタズラ心のつもりだったのだが・・・・・・気分は晴れることはなかった。

「まぁ、いいや! とりあえず、飯!」

 立ち直りの早いクヲンに、仙太は毒気が抜けると同時に罪悪感に苛まれる。
一方で、空兎は突然立ち上がり、

「こうなったらやけ食いだぁぁぁ!」

 無駄に闘志を燃やした。
 どの道、沙恵美は病院のために留守なので結局の所、仙太が作るしかないわけだが、なんで彼がそれを知り得たのだろうか。

(先に一階でも覗いたのかなぁ)

 等と考えつつ、立ち上がって一階の台所へと向かった。
 今日のメニューはミートパスタとサラダの予定だ。

 丁度、仙太が鍋に火を点けた所で、「お! パスタじゃ〜ん〜♪ 好きなんだよね♪」というクヲンの言葉が背後から聞こえきた。

 どうやら、仙太が降りるに続くように、クヲンと空兎も降りてきたらしい。
 てっきり、二人、二階に残ると思った仙太としては、何故か安堵してしまった。

(……いや、なんで僕が安心しなきゃ……いや、いいのか?……いや、あれ?)

 仙太は混乱しながら、いつもならあり得ないミスをしてしまう。
 パスタに包丁を入れてしまった。

「あ・・・・・・」

 気づいた時にはすでに、茹でて7分で仕上がるパスタは見事な二分の一となってしまった。