いつになく真剣な彼女の目が、ジョーを思わず惹き付けさせる中、空になったアイスコーヒーの氷が、カランと音を立てて揺れた。


§


「ちょっと聞いてよぉぉ! クヲンくんんんん!!」

 一通りの鬱憤が晴れた空兎が、次にとった行動は、クヲンの白シャツの襟を掴んで思い切りシャイクするという荒業だった。

彼がアクセサリーとして身につけている銀の十字架のネックレスが千切れんばかりの激しさだ。

「わっ、わっ、わかったから落ち着け! なっ?」

 なんとかそれが耳に届いたのか、ピタッと空兎の動きが止まる。クヲンは、乱れた銀髪を直そうとせずに「それで、どうしたんだ?」と、聞き直した。

「それがせっかく、“鍵”ってのをゲットしたのに、キィってば、なーんにも話てくれないのよ~! いっつも「ウキュ!」とか「ウキュキュ♪」と言わないし~!」

「ん~、キィってその肩に乗ってる奴のことか?」

「そっ! キィ!」

 空兎が嬉しそうに言うと、キィも嬉しそうに「ウキュ♪」と鳴いた。
 その様子を、クヲンは値踏みをするように観察する。

「なぁ、彼女の言い分は正しいのかい?」

 視線をキィに向けたまま、クヲンは仙太に話しかけた。

「あぁ、まぁね・・・。実際、“本”と“鍵”が揃っても何も変化はないよ、今のところはね」

 「ふーん」と値踏みを続けていると、再び空兎のシェイク攻撃が開始される。今度は五割増しで。

「どうにかしてよぉぉぉ!!」

「おぉおぉぉおおお!」

 五割増しになったところで、まともな会話すらできなくなったらしい。
 仙太は溜息混じりなりながら、空兎をクヲンから引き離し、あわや脳震盪にならんばかりのクヲンを救った。

「んなぁぁ! 邪魔しないでよ、せっちん! これからクヲンくんをバターにするつもりなんだから!」

(本気か?)

 心の中で、クヲンと仙太は見事にシンクロした。