明らかに不機嫌だという心情が顔に出ている空兎。
 ジーンズの短パンに黒のシャツというラフな格好で覗き込む格好というのは、余りにも無防備だった。

「あ・・・・・・」

仙太は、空兎の黒シャツの中より垣間見えた白いモノに気がついて顔を赤くする。
 それに気づいたのか、空兎は、さらに眉間にしわを寄せた。

「……なに見とんじゃこらぁ!」

「ご、誤解だ!」

 言い訳空しく、仙太は、あっという間に部屋を追い出されてしまった。
 「KUU ROOM」という、文字板がドアを閉められると同時にカタンと揺れる。

「なんだよ・・・・・・。前は人前でパジャマ脱いでたくせに」

 「変だよなぁ」と思いつつ仙太は、隣の自室に戻り、すぐにベッドへとその身を沈めた。
 うつ伏せから仰向けに寝返って、白い天井に向けて、溜め息をまた一つ吐く。

「アイツがいないからって・・・・・・」

 僕に当たるなよなぁ、と心の中で呟くと同時に想う。

 なんでこんなに気持ちになるんだろう? と。

 そう考えていると、体は自然と空兎の部屋の方向である右向きに向いていた。
 しかし、実際に見えるのは白い壁。

(変なのは、僕かな?)

 そう考えて目を閉じると、ポカポカとした陽気に誘われたように眠気が襲い掛かってきた。
 だんだんと夢と現の区別がつかなくなり、やがて深い眠りに落ちようとした、まさにその時、

「寝てるところ邪魔するよっ!」

 突然の声に、仙太の体は反射的に跳ね起きた。
 視線のその先には、天使がいた。

「白矢………」

「クヲンでいいって」

 紺のデニムジャケットとジーパンといういかにもダークエンジェル的な要素をこれでもかという具合に兼ね備えたその天使、白矢クヲンは、仙太の部屋の窓を無断で開け、その縁に土足で器用に立っていた。

 しかも、ポケットに手を突っ込んだ状態で。

「じゃあ、クヲン・・・・・・。今頃、何しにきたの?」

「ま、色々報告したいことあってね、とりあえずお邪魔するよっと」

 天使の翼を背中から消すや否や、そのまま仙太の部屋に着地するクヲン。あくまでも土足のままで。