そう予感して駆け寄ると、穴が見事に開いているがまず確認できた。
仙太の喉が思わずゴクッと音を鳴らす。

 恐る恐る中を覗き込む。
 薄暗い穴の中が早朝の木漏れ日に淡く照らされて、罠に掛かった獲物が見えた。

「……なんで?」

 真っ先に仙太の中で沸き上がったのは疑問だった。
 穴の中にいたのは仙太が予想していた小、中動物ではない。かといって本命の“鍵”であるかは非常に怪しい。

「えっと・・・・・・大丈夫ですかぁ?」

 仙太が穴の中に向かって呼びかけると、そこにいた獲物・・・・・・いや、自らの腕を枕にして眠っていた人間がゆっくりと目を開いた。

 鮮やかな銀髪をし、白いワイシャツをだらしなく着て、ボロデザインのジーパンをはいた、仙太や空兎と同じ年頃の少年だ。

 アイドルでも通用しそうな顔が、ふぁっと欠伸に歪む。そして、まだ寝惚け眼であろうそれををゆったりと開いて仙太の目と合わせた。

「……やっと助けが来てくれた、な」

 銀髪の少年は、口をニッと笑みの形にして、穴から仙太に向けて片手を伸ばした。わかりやすい「ここから出してくれ」の合図だ。

 仙太はその手をしっかりと掴み、多少フラつきながらも、なんとか引っ張り上げることに成功した。

「ふぃ~、マ~ジ助かったよ。あんたが来なかったら、俺の生涯はチョコパイを最後の晩餐で終わってたぜ」

 パンパンと服についた土を手で払いながら言う少年の言葉に仙太は彼を見る目を大きく開いた。

「えっ? あのチョコパイ食べたの?」

 仙太の記憶が正しければ、ここに仕掛けたチョコパイも袋から出した裸の状態で置かれていた。明らかに衛生上、よろしいものとは言えないはず。

 しかし、この名も知らぬ少年は、さも当然だといった口調で仙太の疑問に答えた。

「だって、チョコパイだぜ? こういう場所で遭難した時に最適な食べ物じゃないか! 特定保健用食品に認定されてもおかしくねぇんだぜ? 普通、食うだろ」

(変な人発見・・・・・・)