今さらだけど僕は君が嫌いだよ、榊。

チャラけた君に彩はもったいない。
もっとお似合いの女がいたろうに、身の程知らずにも稀少な花を手折って散らせてしまった。

僕はきっといつまでも君を許さないだろう。

自分勝手で傲慢な花盗人を。





そして僕達は卒業を迎えた。

彩は非常勤講師となり、僕はもっと研究を突き詰めたくて、師事を仰ぎたい教授のいる大学に改めて入学した。

彩と会う事はなくなってしまったけれど、僕の中の彩はいつまでも消える事はなく、少し胸の痛くなる思い出として僕の内にあった。




きっと僕はずっとずっと彩を想っていたんだろう。

近くにいた時に何も出来なかった自分が嫌で認めたくなかったけど。

だから、あの時の二人を見て、ずっと閉じ込めていた感情が一気に解き放たれた。

彩を泣かせておきながら、幸せそうにしている榊に。

あの榊にそんな顔をさせているあの子に。

あの二人を壊してやりたい。

あの子に罪はないけれど、その幸せは彩の涙の上にあるんだ。

それに、君を傷つければ榊がどんな顔をするだろう。

何年も前のしっぺ返しをこれから食らうんだ。