突然、にやりとルツは笑った。
「…なぁ、じゃあこうしよう。お前が折れないなら俺は船から降りる」
「!」
セドリックは目を見開く。彼が実の弟のように可愛がり、強く育ててきた副船長に離脱を告げられたショックが彼を襲う。
「俺はこの船の副船長だ。船の仲間のことなら、お前以上に知ってる。報告だって、俺がお前に直接してる」
「…ちっ」
「俺が降りたら、困るよな?」
ぎり、歯軋りの音がする。
「…そんなに、あのイタリア人がお気に入りなのか。お前も物好きだな」
「あぁ、それでいい」
真剣な眼差しでルツは見つめる。
「…勝手にしろ。俺は知らないからな」
「!……感謝、する」
良い気はしなかった。
どちらかが折れなければ、仕方のないことであった。
彼らは、解っていた。


