ルツが出ていった後、セドリックはまた地図を見る。無心になりたかった。
(…そういえば、まだ奴らにあのことを言ってなかったな)
船医、航海士、料理人、船員。その他大勢の仲間達。彼らに伝えるべきことを、彼はまだ言っていなかった。
(放送機器はまだ壊れてやがるし、召集かけようにも、な…とりあえず、アイツだ)
彼は立ち上がり、扉を開ける。ガツンと鈍い音。立っていたのは彼のキャビンボーイであった。
「っ…あ、あ…はは…」
「……」
愛想笑い、という言葉が、ジャネットの微笑にぴったりだった。あからさまに嫌そうな顔をして、低い声で命令する。
「…」
「 」
「え…?」
必死に聞き取ろうとするが、実に流暢な英語。習いたての彼には無理に等しかった。
「…医務室行け。額から血出てるぞ」
「っあ、ありがとうございます…!」
彼が少し哀れに思え、今度はイタリア語で話した。その場から去ろうとして、少し振り返ると、まだ彼はそこにいた。


