「実句」



 朋くんが、テーブルの上の私の手を取った。


「俺が福岡に行く前にした話を覚えているか?」


 その言葉に、一年以上前の朋くんの言葉が蘇る。



『俺は、お前とのことは責任を取るつもりだ。

俺がまた本社に戻ったときに、実句が待っていたなら……。

その時は、結婚する』




 そんな言葉、忘れるわけがない。


 私はゆっくり頷いた。



「結婚しよう、実句」



「……」

 窓を叩きつける土砂降りの雨の音ばかりが響いた。