そのままベンチに座って手を繋いでいた。辛うじて見える駅の時計に目をやると、もう一時間くらい経っている。
大志くんの反対の手中にある缶は、すっかりアイスココアになってそうだ。
何時間でもなんて思ったけど、気温もだいぶ下がってきていて、大志くんが風邪を引かないか心配になってきた。
寒くない? と声をかけようとしたとき、大志くんの携帯が鳴った。
でも大志くんは動かない。
「出ないの?」
フルフル、と首を振る大志くん。相手が誰か確かめようともしない。
「おばさんが心配してるんじゃないの?」
考えてみたら、きっと飛び出した大志くんを心配しているに違いない。
でも大志くんは首を振るだけだ。

