「実句さんは、寒さ対策とでも思ってくれたらいいです」


 大志くんが明るい調子で言う。

 私が重く考えないように気を使ってくれてるのかも知れない。

「じゃぁ、そうしておく……」


 ずるい私はその言葉に甘えてることにした。



 そのまま手を繋いでゆっくり歩く。


 ドキンドキンと、一歩一歩進むたびに心臓の音が耳を占領していく。


 手を繋ぐことなんて、大したことじゃないのに、何、こんなに緊張してるんだろう……。

 大体、すでに握手したり、抱き締められたりしたじゃない……。


「……さん?」

「えっ!?」

 急に目の前に大志くんの顔が現れて、頭を後ろに引いた。