「こんばんは、実句です。ごめんね、もう勉強中だった~?」



『こんばんは。
いえ、大丈夫ですよ。本屋で立ち読みしてました』


 電話から聞こえる大志くんの声は、いつもよりも落ち着いていて、低くて何だか心地好い。



『実句さん? どうしました?』

 声をぼぅっと聞いていたら、大志くんが問いかけてくる。



 そうだ、用があって電話したんだった。



「あ、えっとね、昨日今日とお店行けなかったから。試験頑張ってね~って言いたくて」


『ありがとうございます。
でも、それを言うために……?』


「え、うん、変かな~、あはは」



 お酒が入ると、笑いたくなるのは私の性質らしい。



『……』



 大志くんが沈黙する。

 どうしたんだろう?