「で、気になる奴いた?」

 私の赤い顔に気が付かないのか、マスターが耳に手を当てて聞いてくる。


「いませんよ。……そもそも私、彼氏いるんですけど……」


 そう告げると、マスターはポンと、手を叩いた。


「そうだった」

 マスターが声を上げて笑った。

「もう……」

 そうだったって、マスター、朋くんのことを私の"運命の彼氏"とか言ってませんでした?


「じゃぁ、その彼氏はいつ来るの?」

「次の土曜日来るみたいです。またキャンセルになるんでしょうけど」

 ティーカップを揺らしてプリンのような色を眺めながら答えると、マスターは「そっか」と呟く。


 自分から聞いてきたのに、マスターは何故か不服そうだった。